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大自然に囲まれた理想の暮らし

古屋(ふるや)簡易郵便局
原 千草さん

滋賀県・高島市にある「古屋簡易郵便局」。運営しているのは、美術作家としても活動している原局長です。

簡易郵便局の運営と美術活動を両立し、地域のお客さまのために働く原局長の想いを伺いました。

もともとこちらの地域にお住まいだったのですか?

以前は神戸に住んでいました。そこで美術活動をしていた際に、自然の中に作品を展示するイベントがあり、その時に初めてこの地域に訪れました。

ここ一帯は、道路が綺麗に整備されているわけではなく、国立公園のように人が管理している山々でもなくて、本当に自然のありのままの状態ですけど、「素敵な山だ」と初めて見たときから強く感じていました。昔から、将来は山に囲まれた暮らしがしたいと思っていて、この地域が正に思い描いていた「理想の山」でした。

仕事で地域の方々と交流する中で、「こんなところに住んでみたい」なんて話していたら、すぐにお家を4軒も紹介してくれました(笑)。親切にご紹介いただいたので、休日に絵を描くためのアトリエにしようと思い、借りることにして行き来を始めました。

そこから、どうして簡易郵便局長になろうと思ったのですか?

地域の方から後押ししていただいたのが大きいですね。古屋簡易郵便局は前の受託者のご都合により、1年半も閉鎖していて、地域の方も誰か受託できる人はいないかと探していたそうなんです。そこで「原さん、応募してみたら」とお声がけいただいたので、日本郵便(近畿支社)に問い合わせることにしました。

また、アトリエに定期的に通うのに自宅のある神戸から片道2時間以上かけていました。加えて、イラストの制作は、一人で黙々とパソコンに向かって作業する毎日だったので、健康的な不安から、どうにかしなければと思っていたところだったんです。

今までとは全く違う仕事ですよね?

そうですね。ただ、美術作家になる前は、大学の事務員として窓口に来た学生や先生方の各種手続きをサポートする仕事をしていたので、簡易郵便局なら似たような環境の仕事だと思いました。実際に働いてみると、お客さまとのコミュニケーションが取れていい職場環境だと実感しています。

また、簡易郵便局は、美術活動の仕事をしながらでも運営できるので、絵を描くことを辞めずに新しいことに挑戦できるということが、私にとっては非常に魅力的でした。

簡易郵便局の仕事はいかがですか?

今はだいぶ慣れましたが、最初は不安だらけでした。簡易郵便局は、取り扱う業務が限られており、受託前の研修もありますが、最初は難解に思うこともありました。

ただ、そういう時は窓口業務のサポートセンターに電話で問い合わせれば丁寧に教えてくれますし、お客さまも「ゆっくりでいいよ」と待ってくれるので、本当に助かっています。近隣の簡易郵便局長にも何度も相談に乗ってもらっています。

今ではお客さまとコミュニケーションがとれて、気軽に世間話ができるようになりました。農家のお客さまから野菜をいただくこともあります(笑)。地域に馴染めてきたような気がして嬉しいですね。

どんなときにやりがいを感じますか?

どんな取扱いでも「ありがとう」と声をかけていただくことが多く、一つひとつのお客さまとのやり取りから、地域のお役に立てているんだと実感しています。地域の方々にとって欠かせない生活インフラを支えていると思うと、とてもやりがいがあります。

また、お客さまとやり取りを重ねていく中で、意外にも「ここに電気の明かりがついていることだけでも嬉しい」と言われることが多くてビックリしています。前受託者のご都合により簡易郵便局が閉鎖していたころ、このあたりでは公共施設が小学校しかなかったそうなので、私が簡易郵便局を運営し始めたことで地域の方々も「ここの地域はまだ機能している」と実感するそうです。それに私が貢献できているのは嬉しいですね。

美術活動との両立について教えてください

簡易郵便局の運営は、地域の方々のためにも月曜日から金曜日まで毎日窓口を開けなければならないので、時間がないように思われますが、いつも決まった時間に仕事が終わるので、計画的に美術活動に取り組めます。業務中も、お客さま対応や事務処理などが当然ありますが、手すきの時間があった時は、頭の中でイラストの構成を考えたりして、有意義な時間を過ごせています。もし自分が会社員だったらと考えると、美術活動の両立はできないと思います。

金銭的な面でいえば、残念ながら今は美術作家の仕事だけで生計を立てられるほど稼ぐことができていません。それでも好きな美術活動ができるのは、簡易郵便局の運営で生活基盤ができているからですね。

簡易郵便局を開局したときには、古屋簡易郵便局のポストカードをつくって地域の方々にお配りしました。簡易郵便局の運営との両立らしい制作だったと感じています。いずれは風景印のデザインに携わるなど、制作の幅を広げたいですね。

これから開業を考えている方へメッセージをお願いします。

お客さまは、郵便局を信頼してくれていて、心を開いてくれる方が多く、フレンドリーに接していただけます。簡易郵便局は、地域の方々と人間関係が築きやすいので、地域に溶け込み、地域の方々とコミュニケーションを取るのが好きな方には向いていると思います。

また、地方に移住を考えている人や新たな取組みにチャレンジしたい人は、簡易郵便局の運営が生活の基盤となるので、第一歩を踏み出すには最適な仕事だと思います。